死体の国





昔々ある所に うつくしい王様の治める国がありました。
それは緑の豊かな平原の中の、とても大きな国でした。

ある日のこと、王様はこう考えました。


「こんなにも私はうつくしいのに、こんなにもうつくしい国なのに、
 何故この国にはみにくい者がたくさんいるのだろうか。
 この国にみにくい者など いらない。
 そうだ、みにくい者は全て殺してしまおう。
 そうすれば、この国はもっとうつくしくなる。」

そうして、王様は自分の国にいるみにくい者を
全て処刑する事を決めたのです。

王様は、国をよく見わたせるうつくしい丘の上にギロチン台を置きました。
そのギロチン台は、王様が新しく買った、ピカピカのものでした。
うつくしい丘の上にはたくさんみにくい者が集められて、
そして最初にギロチン台に上がったのは、まだ結婚もしていない、若い男でした。

男は、何かよくわからない言葉を大きな声でたくさん叫んでいましたが、
ピカピカのギロチンの刃が落とされると、まるでカエルか何かがつぶれたような
おかしな声を出して、たくさんの血を飛び散らして、
そのみにくい頭をゴトン、と下に落としました。

頭はしばらくの間ピクピク動いていましたが、
すぐに動かなくなりました。

丘の上には小さな子供も集められました。
おじいさんや、おばあさんもいました。
みんなこの若い男のように、おかしな声を出して、血をたくさん出して、
ゴトン、と頭を落とされていきました。

うつくしい丘の上は、一日で真っ赤に染まりました。

国からみにくい者が減って、王様はとても満足しました。





それから1ヶ月後。

丘の上には、相変わらずたくさんの者が集められていました。
丘の上は、乾いた血で茶色くなっていました。


処刑は、まだ続いていました。


国からみにくい者はいなくなっていませんでした。

王様は、みにくい者を処刑し続けました。
自分の父親や、母親も処刑しました。
ギロチンの刃は血や脂がたくさんこびりついてしまって切れ味が悪くなっていたので、
王様は毎日刃をみがかせなければなりませんでした。

処刑は 続けられました。

みにくい者は、いなくなりませんでした。






それから、また1ヶ月後。

処刑は、まだ続いていました。

国はうつくしい者ばかりになっていました。
ギロチンの切れ味は、更に悪くなってしまっていたので、
王様は刃の上におもりをつけなければなりませんでした。


処刑は、終わりませんでした。






そして、更に1ヶ月後。

国に、人はいませんでした。

王様のお城にだけ、人がいました。
王様と、小さな小さな女の子です。
他の人は、みんな王様が処刑してしまいました。
王様は、最後に残った小さな女の子を、お妃様にしました。

お妃様は、うつくしい女の子でした。
とてもうつくしい女の子でした。
でも、もうそれも昔のお話です。

ギロチン台のある丘は、相変わらずかわいた血で茶色くなっていました。
でもそのほとんどは、たくさんのみにくい死体で見えなくなっていました。
死体の山にはたくさんのハエやカラスが飛び回っていて、
思わず鼻をつまみたくなってしまうような腐臭で、いっぱいでした。

王様は、死体を燃やすための人も処刑してしまっていました。

その腐臭は、ギロチン台のある丘の上から降りてきて、
街にもたくさん広がっていました。

街にはたくさんのドブネズミや、その他のみにくい虫がいました。
その死体や、フンもたくさんありました。

王様は、町をきれいにするための人も処刑してしまっていました。

国は、まわりのどこの国よりも汚く、そしてみにくくなっていました。
王様は、食べ物を作るための人も処刑してしまったので、
うつくしかった王様とお妃様は、食べるものがなくなって、
たくさんの病気にもかかって、
今までその国にいたどんな人よりもみにくくなって、

死んでしまいました。








とても長い時間がたちました。

国に、みにくいものは何もありませんでした。
あるのはたくさんの骨と、風化してところどころがくずれた建物だけです。
今はもうドブネズミもいません。
生きているものは、何もありません。

その国はやがて、旅の人たちの風のうわさで、

こう呼ばれるようになりました。




『 死  体  の  国 』










ここまで読んで下さって、どうもありがとうでした




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